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人と人とのつながりを大切に考え、モノとその先にある作り手と使い手の想いが出会うきっかけを提供しています。

2013.11.19

インタビュー:arie:chroma 岡野真理絵

ただいま開催中の展示会「arie:chromaの 陶器でつくったきのこ展」。陶器を素材に作品づくりをしている作家の岡野真理絵さんに、これまでの活動についてお話を伺いながら、作品づくりへの想いや考えに触れてみたいと思います。



− 作家活動をはじめた経緯やきっかけを教えていただけますか。

陶器で制作をはじめたのは大学の二回生くらいからです。その頃から当時作家として活動してらっしゃった方たちと一緒に、巡回展に出展するなどの活動をしていました。大学を卒業して就職を機に制作は一度辞めたのですが、将来的にはまたいつかはじめようと思っていました。就職して、仕事にのめり込めたらずっとそこで働いてもよかったのですが、私にはそうはなれなかったんです。退職したときに少し体調を崩したこともあって、何もしていない時期があったんですけど、何もしないのであれば少しでも制作をはじめようと思い、再び作品づくりをはじめました。

− 作品は、はじめから今のようなアクセサリーをつくっていたのですか。
最初につくったのはボタンでした。ボタンにした理由は、大学の課題で制作をするときに「陶器のみで成り立つものをつくる」という考えが自分の中にあったからです。おもしろい形のものでも穴が空くとボタンになるじゃないですか。そういう感覚でわりと自由な形に成形したものに穴をあけていろいろつくっていました。ブローチなどのアクセサリーは、わりとすぐ、そのボタン達から派生していって、つくられていきました。



− 自然をモチーフにしていることには何か理由があるのですか。
まず第一に、花がとても好きなんです。育てていても結構枯らすんですけど(笑)でもうまく育てられたとしても、ひとつの花が咲いている期間って短いですよね。その短い時間に人が花を見て「美しい!」と感じる魅力をそのまま閉じ込めたい、その瞬間に捉えたものを形にしたいという思いがあります。そこが植物にこだわる理由かもしれません。動物の形も面白いと思うのですが、植物ほどには興味が湧かなくて。造形というか、ラインとか、成長の過程も含めて変化がおもしろい植物には惹かれるものがあります。

− 今回はキノコがモチーフになりましたが制作をしてみていかがでしたか。
キノコは自分の中に常にある作品のイメージが一本の道だとすると、そこから少し派生した脇道のような感じでした。友だちにキノコが好きな人がいたことがきっかけで、興味を持つようになって制作をしてみたのですが、なかなか奥が深かったです。これまでのシリーズで既に8点ほど制作していたのですが、今回は、そこからさらに点数も増やし、30種類以上つくりました。いつも一つのモチーフをこれほど大量につくることはしないので、少し大変でしたが(笑)。普段、つくるものを決めたら先ず絵を描いて、その絵の状態でリアリティを出してから、陶器にどう置き換えるかを考えます。ですが、今回は絵の時点でリアリティを追求するという作業をしなかったものもあり、写真などから描いたラフ画から、直接どう陶器の状態で表現するかを考えたので、これまで作品をつくってきたプロセスのセオリーを踏まずに制作をしたのもが多くありました。つくってみて、ここにもう一色入れておけばよかったかな、とか思ったりすることもありましたが、手間の数、イコール「よいもの」が出来るというわけでもないということを発見しつつ、試行錯誤したことがおもしろかったです。



− 陶器で作品をつくっていることに理由などはありますか。
私は、もともとはファッションに興味があったんです。中学生のときに洋服を祖母に教えてもらいながら初めてつくったのですが、それがすごくたのしくて。進路を決めるときも、普通の高校には行きたくないなと思って、美術の学べる高校へ行き、3年間ファッションアートについて学びました。でも実は私、立体認識が乏しいというか(笑)モノを平面的に見がちなんですね。ファッションは製図して布を切り取ってというところまでは平面の作業なのですが、最後の縫い合わせるところで立体になる。将来的にファッションに関することを仕事にしたいと考えるのであれば、このままでは何かまずいんじゃないか?と、考えたのです。そこで自分に欠けている能力を補おうという思いもあって、立体を学ぼうとしていたところ、陶芸に出会ったというか。私の通っていた高校には陶芸科もあったので、学内の人の作品を見たりすることで、陶器という素材をわりと身近に感じていました。かなり大人になるまで、絵を描くことと、服を作ること、陶器でアクセサリーをつくることは、自分の中で同じくらい好きなことだったんですが、ある日「でも、じゃあ、自分はどれを選ぶんだろう?」と悩んだことがありました。結局、陶器を選んだ理由は、デザインから成形、アクセサリーとしての完成までを、最初から最後まで自分一人で制作出来る素材だったからなのだと思います。

− 誰かと協同したり、工場に発注してものづくりをすることは考えたりしますか。
制作するものを生産ラインに乗せたいということではないのですが、量産してプロダクトをつくることについてもう少し知ってみたいなと思っています。自分が高校で教わったファッションアートというのも、デザインしたものや発想をいかにして形にするかという実習をしていましたし、大学も陶芸でしたが工芸色がそれほどに強くない校風だったので、周りにもオブジェや用途のないものをつくっている人が多かったんです。なので、私もその中で、何の違和感もなく同じような感覚でものをつくっていました。私の場合はそれが身に付けられるものだった、という感覚ですね。美術というものを学びはじめてから、ずっとそういった環境の中で制作をしてきたので、本当に最近まで、プロダクト的な方法でアクセサリーをつくるという概念が自分にはありませんでした。カルチャーショックとまではいかないですけど。自分がそういうアプローチをしてこなかったので、今、改めて自分にとっての作品のあり方や作品のつくり方について考えています。

− これから何かしたいことや考えていることはありますか。
私にとって、アクセサリーを身に付けるという行為は、誰かが持っている美的な感覚やセンスを自分の中に取り入れるという意識の行為なので、あらゆるモノに対して、自分がつくったものではなく、他人がつくった素敵なモノを持ちたいという気持ちがあります。よく考えると自分が身に付けるという点ではプロダクト的アプローチのアクセサリーはすごく好きだし、手作業でやってるからいい、とか、一点物が好き、という線引きは特にありません。ただ、これまでの自分にとって、全てを手作業で行うということに意味があったから、そうしているだけなんです。陶器という素材を選んでいるのも、素材自体の魅力もありますが、素材選びから成形から、なにもかも自分ですることができるというところに最大の魅力を感じていることが理由だったので、どれかひとつの工程を切り離して考えるということは今まで考えてきませんでした。でも今、少し変化が生まれ初めている感じがしていて、もうちょっと掘り下げて勉強して、これから自分がどうしていきたいか、何を残して何を切り取るのか、またそれがどういう表現になるのか、この活動をどうやって続けていくかをしっかり考えていきたいなと思っています。



岡野真理絵(おかのまりえ)
1984年、京都生まれ。京都市立銅駝美術工芸高等学校ファッションアート科、京都精華大学芸術学部陶芸科卒業。高校で服飾を学んだ後、大学では陶芸を専攻。大学在学中に陶器によるボタンやアクセサリーのブランド「arie:chroma」を立ち上げる。shopでの販売や、他の作家との合同展示会などの活動をするが、大学卒業後は一旦活動を休止し、ジュエリーの販売・デザインの仕事を経て2010年7月に活動を再開させる。現在は、独自のアクセサリーを制作し、展覧会や展示会をおこなう一方、コラボレーション商品やオーダー商品なども制作している。
http://ariechroma.com

arie:chroma の 陶器でつくったきのこ展
会期 / 開催中 - 11月24日(日)
場所 / graf(大阪市北区中之島4-1-9 graf studio 1F)
時間 / 11:00 - 19:00
お問合せ / graf(tel. 06-6459-2100  mail. shop@graf-d3.com)
 

 

 

2013.11.06

インタビュー:SIRI SIRIデザイナー岡本菜穂

現在ショップにて展示中のコンテンポラリージュエリーブランド「SIRI SIRI」。デザイナーの岡本菜穂さんに、自身のデザインやものづくりへの姿勢を伺いました。伝統技術とデザインとが自然に調和しながら、唯一無二の存在感を放つSIRI SIRIの作品の魅力に迫ります。



— 伝統技術を用いながら、すごく自然にその技法から生まれるデザインを商品に溶け込ませているような感覚をおぼえます。職人さんとの関わりについてや岡本さんの考えるものづくりについてお話を聞かせてください。
2006年にSIRI SIRIをスタートさせた当時、日本の伝統技術を使ったいろいろなプロジェクトが地場産業の活性化を目指して立ち上がっていた頃でした。でも、その取り組みに私が魅力を感じていたかというとそうでは無くて、地場産業を活かしたものづくりをするときに起こる素材や技法の制約に、違和感を感じていました。この素材を使わなければいけない、という話からものづくりをするのではなくて、デザイナーとしてつくりたいものを地場の技術をつかって表現をするという流れが自然なのではないかと、そんな風に思っていました。

— 江戸切子をつかった商品はどのようにして考えついたのですか。
江戸切子という技法をあえて使ったものではなく、表現の方法のひとつとして江戸切子を考えたところが発端になっています。前々から現代の日本のプロダクトは、どこか素材を取って付けたように扱っている、つまり何となく不自然さを感じさせるものが多い、という印象を持っていました。シャネルなどは地元のレースを普通に商品に使いながらも、それをわざわざ打ち出すようなことはしていないですよね。技術が前に出てくるのではなくて、当たり前につかっている。そういうように、普通にそれらの技術をつかって勝負できるブランドがあってもいいなと。伝統工芸だからそれが魅力的ということではなく、モノが素敵である。ということが大切なのではないでしょうか。江戸切子ですが、その土地に切子という特殊な技術を持つガラス工房がある、ということは、そこになにかしらの理由があって存在しているということなので、たまたまですけど、私が東京に生まれて、東京で活動をしながら、知識や制作を地産地消のようにすることができたのは良かったと思っています。あまり根拠はない考えなのですが、自分にとって身近に感じられる技術を使ってものづくりをすると、嘘が無いものができるのかなぁということが頭にあります。もちろん、東京以外での活動も増えてきていますし今後もチャレンジしていきますが、日本人として常に身近にある素材や制作技術を使う事がこれからも主軸になっていくとは思います。

— 職人さんとはどのようなやり取りをしてデザインや考えを伝えるのですか。

先ずは自ら職人さんのところに足を運んで、直接つくってもらいたいという意志を伝えます。下町だからなのか、本当に人情味があって、会ってお話しているとすごく親身になって協力してくれます。これまで江戸切子では扱わなかった素材をつかって制作をしたときも、職人さんが職人さんとして新しいものや技術を生み出すことへの喜びを見つけたのか、どんどん乗ってきてくれました。私の場合はデザインしたものを模型にして職人さんに見せるのですが、職人さんからアドバイスをプラスαしていただくことで、もっとよいモノができあがります。作品の出来上がりに込めるニュアンスの部分まで図面で指示をすれば職人さんはきちんとそれ通り仕上げてくれるので、職人さん任せではなく、そういったことも緻密に計算して図面にしていきます。



— 日本人であるということを意識していますか。
私は、日本人のものづくりの資質は素晴らしいと思っているし、SIRI SIRIを通して日本の文化や美意識を世界に伝えていきたいと考えています。海外でインタビューをされたときに、日本の文化についてきちんと言えるようにならないと、私の活動や作品も広がっていかないなと感じるんです。日本人同士だと共通認識というか、ニュアンスの部分を説明しなくてもなんとなく通じてしまうんですけど、抽象的にモノづくりをしているだけではダメだなと思うようになりました。日本人は品質の高いものをつくっているので、やっぱり世界に出て行く方がいいと思うんですよね。だから海外できちんと勝負できるためにも言葉にすることは大切だと思います。モノづくりをしている人たちはまだうまく言葉に出来ていない気がしています。

— ファッションについてどのように考えていますか。

ファッションは生きていく上で必要不可欠なものではないかもしれませんが、でもどこか惹かれるものがありますよね。そこに人間が人間であるが故の、人間らしいところがあるのではないかと思うんです。「食」は生きる上での根本的なところですけど、ファッションの無意味さにある魅力こそがファッションの芯なのではないかと思うんです。これってよく批判されるところだし、経済が停滞していくとブランド物を買うことを否定されがち。それでもファッションが衰退しないのは、女性がお花を好きなように、あらがえない本能のようなものが人間にはあるのではないでしょうか。

— ジュエリーについても同じように考えていますか?
ジュエリーはファッションの一部という考えを持っています。活動当初、コンテンポラリージュエリーというものは、それこそ意味を持たせ過ぎているものが多かったように思います。おもしろい試みではあるんだけど、私はもうちょっと女性のファッションに合うものや、日常の洋服に似合う、ウキウキするようなものをつくりたかったんです。それ単体ですごくおもしろくてもコーディネートが成立しないことは、私にとっては意味がないことです。



— SIRI SIRIさんのつくるものは、金具などの細かいディティールもとても素敵ですね。
アンティークのジュエリーが好きなんですが、アンティークのジュエリーって本当に細工がよく出来ているんです。でもよくよく考えてみると、その細工も当時手作りでつくるしかなかったという状況がきっとあって、精度の高いものをコツコツとつくっていたと思うんです。例えば金具にロゴがちょっと入っているだけでドキっとしたりする感覚は、実際につかってこそ気付くところだし、身に付ける気持ちよさはそういう細かいところからも生まれるはずだから、商品を全体としてみたときに、そういう細かいところへの配慮というものはアンティークジュエリーから倣っているところがあります。

— 最近はデザインするものが自然のものをモチーフにしたものが増えてきたように感じます。
昔は硬質な感じというか、建築ならコンクリートがズバーンというものが好きだったんですけど、特に311以降、居心地がいいものや自然が好きになってきました。それを特に意識してものづくりをしているワケではないのですが、ちょっとずつつくるモノに影響がでてきていると思います。基本的には常に「変わりたい」と思っているので、ものづくりをする人以外とも話しをするようにしています。自分がどれだけの可能性を持っているのかを見てみたいし、どこまでどんな幅があるのかに興味があります。変わることが可能性だと考えています。



— 暮らしの中で気を付けていることはありますか。
「どうでもいいや」と思い始めると本当にどうでもよくなってしまうので、そういう風には思わないようにしています。例えば今のスコッティのデザインが生まれた時の話なんですけど、たしか70年代にあったコンペ*の受賞作があのデザインなんだそうです(*注: 正確には1986年)。コンペのテーマが「花柄」、ロゴも決められていたのにもかかわらず、その両方のルールを破って受賞したんだそうです。デザインした松永(真)さんによると、花柄のティッシュは日本の住宅に合わないからということだったそうなんですけど、そんなことを言うデザイナーもすごいと思うし、選んだスコッティもすごいって思うんです。話は逸れたけど、だからティッシュはスコッティだ!って(笑)そういうこだわりはありますね。ものづくりの内側にいる人の気持ちもだんだんわかるようになってきたというか、こういう仕事をしているとお客さんにも、そんなモノづくりの背景みたいなものも踏まえた上で買ってもらえたらうれしいです。



— SIRI SIRIとして今後考えている事はありますか。
私はSIRI SIRIの一デザイナーという立ち位置で、SIRI SIRIの世界観を表現していくことをしてきたので、これからはSIRI SIRIとしてのジュエリー部門は私、ファブリックは誰、とかそういうように展開していけたらと考えています。ジュエリー以外にも興味があって、例えばストールやバッグといった、文字通り身体に近いアイテムから挑戦していきたいです。プロダクトの世界では伝統技術に裏打ちされている1616 / arita japanのようなものが結構あるように思うんですが、日本のファッション業界はまだそういうことが少ないと思います。つくり手が日本人ならば、藍染めや織りに限定しなくても、海外の人に伝わる日本的な感覚は表現できるはずなので、そういうことを意識したアプローチをしていきたいです。そしてもっと、SIRI SIRIとして何を表現したいかということを哲学的に掘り下げていきたいと思っています。それは机の前で考えていても答えが出てくるワケではないので、こうして大阪に来てみたり、ぼーっとしてみたり、運動してみたり、全然違う分野の人たちと話をしてみたり、ものづくりじゃない人たちとも触れあったりしながら、考えていきたいなと思っています。



SIRI SIRI デザイナー 岡本菜穂(おかもとなほ)
建築家で抽象画家の父の影響で、幼いころよりアートやデザインに囲まれた環境で育つ。 桑沢デザイン研究所スペースデザイン科在学中、より身近な自分自身の身体に近いもののデザインに対する興味が高まり、ジュエリー創作に向かう。 2006年 ジュエリーブランド「SIRI SIRI」を発表。 建築、インテリアデザインを学んだ経験を活かし、日常の身のまわりにある素材をジュエリーに昇華させる独特な世界を展開する。
http://sirisiri.jp/

SIRI SIRI 受注展示会 JEWELRY IN MY LIFE
会期 / 開催中 - 11月10日(日)
時間 / 11:00 - 19:00
場所 / graf(大阪市北区中之島4-1-9 graf studio 1F)
お問合せ / graf(tel. 06-6459-2100 mail. shop@graf-d3.com

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