企業理念 Philosophy
集団でデザインすること
デコラティブ・モード・ナンバースリーは、建築家、プロダクトデザイナー、大工、家具職人、芸術家、調理師の6人によって生活空間を舞台とする全てに対してのデザイン提案を行うために結成された。発想からデザイン、製作までを共同製作のもとで行っている。専門の違うもの同士の共同作業により「生活」といったものを扱う時に欠く事のできない、身体・時間とそれらが存在する空間に対する関連性といったものをより有機的な視点でながめることが可能となる。「建築」の問題を「芸術」的な発想の元に「デザイン」し、「料理」の為の「家具」のある空間を「大工」が形作るのである。
装置としての空間
空間の仕事をする上で、我々はよく日本庭園について語る事がある。なぜなら、我々の空間に対する考えは、日本庭園が持つ、身体に訴える装置としての役割に強く影響を受けている。たとえば、優れた日本庭園における月を観る為にだけ設けられたバルコニーは、月が一番美しく見える季節の月の位置にあわせて全体が構成された庭を最も効果のある状態で鑑賞できるように配慮されているし、人々の絶景への感動を倍増させるために配置された飛び石の役割は、絶景のポイントのぎりぎりまでの人の視線を足下に集めておく為にある。そのとき、庭園内のそれぞれの造形物は自らの美しさもさることながら、すでにそこにあるものである草木や月を最も引き立てるために、自らを不可視の存在へと変化させるのである。空間はそこでの時間のために存在し、心地のよい時間を過ごすきっかけを与えた後はその姿を序々に消してゆくものである。
関数としてのデザイン
現在までの我々の表現領域は多岐に渡っている。これは、生活というものをデザインしようとするときに避けることの出来ないことだと考えている。なぜなら、当然の事ながら、私たちは何か一つのことをするだけでは生きてゆくことはできないからである。食事、排泄、睡眠、娯楽など生活という一括りは、様々な要素が複雑に絡み合って初めて成立するものだからである。それらは、微妙なバランスの上にたって初めて到達される総合芸術である。絵画よりも彫刻に近く、映画よりも舞台に近いものであると考える。例えば、私たちはレストランをデザインするときは、生活という現実に展開されているインスタレーション・アートをプロデュースしていることとして受け止めている。そこでは、用意された舞台装置のうえでパフォーマンス・アーティストである調理師やウェイター、ウェイトレス達が観客さえも参加する総合芸術が繰り広げられている。それらを、一貫したコンセプトで体現してゆくには、造形的なデザインや単発的なアイデアといったよりもむしろ全てを変換しうる関数をデザインしてゆくことが重要であると考える。われわれは、その関数をデザインしグラフという舞台で実践してゆきたいと考えている。