いつもいろいろな形でgrafとコラボレーションをさせてもらっているブランド、SPOLOGUM(スポロガム)。その独特な素材の組み合わせや色づかい、あまり見ないような加工方法やパターンなど、遊び心があり挑戦的なアプローチに富むアイテムはgrafスタッフたちにも人気です。今回はスポロガムのお二人と一緒に大阪の街を歩きながら、彼らが大切にしているもう一つの活動(?)“道に落ちてるモノ拾い”をしながらお話を伺いました。変化なのか原点回帰なのか。どこか新しい方向へと顔を向けているお二人のものづくりやデザインって、いったいどういう視点から生まれるのでしょうか。
野中さんがよくしている、道に落ちているものを拾う、という行為って意識的なものなんですか?作品制作のためのサンプリングという感じなんでしょうか。
野中厚志:サンプリングではないんですよね。商品を作るためにという目的はないです。無意識。趣味でもないです。なんか、気になるんですよね。
森由江:街できれいな人がいたら見てしまう感じに近いんじゃないかと思います。
野中さんの場合は、それがきれいな人ではなくて落ちているモノだったんですね(笑)。
野中:目にしたものが気になって「あれはなんだろう?」という場合、フォトグラファーの人だと写真を撮るけどボクは拾う。拾ったものが集まってきて冷静にそれらを見ていると、フォルムが好きなのか色が好きなのかということがその時になってわかってきます。とにかくなにも考えないで拾っていますね。
今はすごく拾わなきゃいけないって意識して歩いてしまっています。これとかは、、、ずいぶん写真向けですね。
野中:そうですね、これはー、、、(笑)意味やプロセスがありそうで、それが説明臭くなりますね。
状況ですね、これは。街ではなく海とかで漂着物を拾ったりはしますか。
野中:海は海で好きですよ。前に森が海辺で乾電池を拾ったんですが、それは透けていて白っぽいエメラルドグリーンで、海の色をしていました。街で拾った錆びている乾電池を並べると面白い対比になる。なんでこうなっちゃったんだろうって想像が膨らみますよ。
視点を変えると、モノの見え方も風景も変わってきますよね。
野中:あ、これとか撮影ポイントです。拾うものではないけど、なんかオシャレ。
お洒落か。わざわざそう言われないと、そういう風には見えないもんですね。でも、よくわからないんですけど、、、。
野中:こういうのはたまにTシャツに活かしたりとかします。スキャンして、インクジェットプリントのレイヤーにしたり。
こういうものに興味を持ちだしたのはいつからですか。
野中:いつでしょうね。けっこう小さいころから興味がありましたね。実家の近くにスクラップ置き場があって壊れた車に乗り込んだり、ガラス繊維で出来た船で遊んで血だらけになったりとか、そういう事が原体験としてあります。父がすごく厳しくて毎晩書道をやらされたりとか、まぁスパルタだったので、
外に出たときはそういう家のルールから解放されて目一杯遊びましたね。外と家という対比を味わいながら生活していたと思います。
ファッションの道に進んだのはどうしてですか。
野中:高校卒業を控えて進路を決めるころ世間がDCブランドブームだったんです。デザイナーという仕事があって、しかも有名になれるんだ!ということになんだかわくわくしてファッションの学校に行きました。
当時から今の作風だったんですか。
野中:いや、就職した会社の社長が僕の着ていたワークウェアを見て「そういう服、野中くん似合っているし、いいんじゃないの?」って言ってくれたことで、何かに気が付きました。当時、ワークウエアが今ほどファッションの中では当たり前ではなく、特別意識したことがなかったんです。その頃から本で調べたりしてファイリングをはじめました。ファッションというものは華やかなものだと思っていたんですけど、自分が心から楽しめるモノというのはこういうところにあるのかなと思いました。きれいなものだけが服ではないですし。
きれいなものだけが服じゃない、とおっしゃいましたけど、何かに対しての反抗心があったりもするんですか。
野中:もともと反抗心はあるんですが、それよりも「こういうファッションが素晴らしいんだ」という、目的をもってデザインをするということに、もしかしたら限界を感じながらデザインをしていたのかもしれません。でも単純に「拾って楽しい」という自発的で自然な行為は、ファッションであってファッションでもないし、趣味かもしれないし、テクスチャーかもしれない。はたまた美術かもしれない。遊びがあっていろんな解釈ができる自由度が高く、人から見ていかようにも解釈してもらえるところに、僕なりのアンチテーゼやメッセージが込められていると思うんです。
※ 野中さんが拾ったもののコレクション
webで拝見しましたけど、最近、映像をつくっていますよね。プリントやペイントだけでなく、ちぎったり切り刻んだり自由にしていますけど、あれを見たときに、商品や作品性だけじゃなくて、スポロガムがそもそもやろうとしていることがよくわかったんです。ブランドというよりもスポロガムという名前のプロジェクトなんだなって。
森:映像にするというのはスタイリストさんやカメラマンさんのアイデアです。こういうのをつくったらおもしろいんじゃん?ってところからはじまっているんです。周りの人たちが楽しんでくれています。
野中:よい意味で周りの皆に委ねているせいか発見が多いです。本意でも不本意でもなく。客観視されられたことで視界が広くなった感覚はありますね。自分ではぜったい考えられないことだし、見えなかったことでもあります。
いずれにしても、もののつくり方がセッションなんですね。どこか事故を前提にしていて。テキスタイルも、それをつくる業者さんとのセッションなんだろうと思います。そんな感覚でものをつくっているところが、ちょっと冷や冷やしますけど、おもしろいです。
野中:何というか、何をやっている人だかわからない、とまではいかないけど、いろんな風にみられた方が楽かなと思っています。自らを制約せずに過ごせるからかも。
森:そういられるのが楽というよりは、そうしたいんでしょ。
野中:フム。そんなスタンスでいろんな人と関わったり繋がったりしていきたいんですよね。
森:野中は人と一緒に仕事をするのがすごい好きな人なんです。一人でこつこつ作品をつくり込むよりは、自分のパート、役割をしっかり持ちながらセッションして作っていくことが好き。
なんだか6年前の展示、グリーナーズ*を思い出しました。今回もご一緒できてうれしいです。
野中:グリーナーズでは、あの時やりたかったことを一緒に言葉にしていくという作業からじっくりやったのが本当によかったと思います。ライブペイントもワークショップも、あの時にいろいろやらせてもらえたのが今の下地になっていますし。僕はgrafに共感しているこの感覚を、テキスタイルや企画で表現できたら自分にとってもgrafにとっても、とても素敵なことになるんじゃないかって思ってるんですね。お互い足りないところを補うのではなく、今までとは違うギアがスコっと入る。そういう関係で何かをすることが好きなんです。
SPOLOGUM(スポロガム)
野中厚志と森由江の2人による衣服やテキスタイル、アートにわたって活動するブランド。主にイメージを野中が、テキスタイルを森が担当。拠点を2013年から東京に移し、衣類への表現の他、インテリア、アートワークに至る様々なアプローチを試みる。
SPOLOGUM / http://spologum.com
*グリーナーズ(Gleaners):2008年10月15日から2009年1月25日までの期間、graf bld.の1階で開催したgrafとSPOLOGUMによる展示企画。商品の展示販売や、アイデアソースの展示の他、会場に常設したシルクスクリーンの飛び込み参加型ワークショップテーブルが好評を博した。